デジタル化・AI導入補助金2026の通常枠は、中小企業・小規模事業者等が、自社の業務課題に合ったITツールを導入し、業務効率化や労働生産性の向上を図るための申請枠です。
通常枠では、導入するITツールだけでなく、自社の経営課題、改善する業務、導入後の効果、労働生産性の計画が整合しているかが審査されます。
POINT
通常枠では、申請する補助額や過去の交付決定歴によって、賃上げ計画が「加点項目」になる場合と「申請要件」になる場合があります。申請前に、自社がどの条件に該当するか確認することが重要です。
- 補助額は5万円以上450万円以下
- 150万円未満は1プロセス以上が必要
- 150万円以上は4プロセス以上が必要
- 補助率は原則1/2以内、一定の最低賃金要件を満たす場合は2/3以内
- 賃上げ要件は申請額と過去の交付決定歴によって扱いが変わる
- 加点だけでなく、過去の交付決定歴等による減点措置も確認する
- 契約・発注は原則として交付決定後に行う
デジタル化・AI導入補助金2026「通常枠」の概要
| 項目 | 5万円以上150万円未満 | 150万円以上450万円以下 |
|---|---|---|
| 必要な業務プロセス数 | 1プロセス以上 | 4プロセス以上 |
| 補助率 | 原則1/2以内 一定の最低賃金要件を満たす場合は2/3以内 | |
| 賃上げ目標 | 原則は加点項目 過年度採択者は一部必須 | 原則として必須要件 |
| 補助対象経費 | ソフトウェア購入費、クラウド利用料(最大2年分)、導入関連費 | |
| 申請方法 | IT導入支援事業者との共同申請 | |
補助額150万円未満の場合は、導入するソフトウェアが1つ以上の対象業務プロセスを持つ必要があります。150万円以上を申請する場合は、4つ以上の業務プロセスが必要です。
ただし、「汎用・自動化・分析ツール」に該当する汎用プロセスだけでは通常枠を申請できません。対象となる業務プロセスを持つソフトウェアとの組み合わせが必要です。
補助率2/3が適用される条件
2024年10月から2025年9月までの間に、「当該期間の地域別最低賃金以上、かつ2025年度改定後の地域別最低賃金未満」で雇用していた従業員が、全従業員の30%以上となる月が3か月以上ある場合は、補助率2/3以内の対象となります。
適用を受ける場合は、所定の賃金状況報告シート等による確認が必要です。
通常枠の申請前に準備すること
通常枠は、事務局に登録されたIT導入支援事業者と連携して申請します。ただし、GビズIDの管理や申請内容の確認、宣誓、認証、提出など、申請者本人が行う必要のある手続きがあります。
- GビズIDプライムを取得する
- 補助金申請と同じGビズIDでSECURITY ACTIONを自己宣言する
- 自社の経営課題と改善したい業務を整理する
- 登録済みのIT導入支援事業者とITツールを選定する
- 利用する加点項目を確認し、期限までに実施する
SECURITY ACTION(一つ星)は、中小企業等が情報セキュリティ対策に取り組むことを自己宣言する制度です。2026年4月からは「SECURITY ACTION管理システム」で手続きを行います。有効なGビズIDを取得済みで、事業者情報を確認できる状態であれば、申込みから自己宣言...
注意
GビズIDのログインID・パスワード・認証コードを、IT導入支援事業者を含む第三者へ共有しないでください。
申請内容の確認、宣誓、認証、提出は申請者本人が行います。
賃上げ要件|「必須」と「加点」の違い
通常枠で特に分かりにくいのが賃上げ要件です。扱いは、申請する補助額とIT導入補助金2022~2025の交付決定歴によって異なります。
| 申請区分 | 1人当たり給与支給総額 | 事業場内最低賃金 | 扱い |
|---|---|---|---|
| 150万円未満 過年度の交付決定なし | 年平均成長率3%以上 | 地域別最低賃金+30円以上 | 加点項目 |
| 150万円未満 2022~2025に交付決定あり | 年平均成長率3.5%以上 | 地域別最低賃金+30円以上 | 給与総額の目標と従業員への表明は必須 最低賃金目標は加点 |
| 150万円以上 過年度の交付決定なし | 年平均成長率3%以上 | 申請要件は+30円以上 +50円以上なら賃上げ加点 | 申請要件 +50円以上で加点 |
| 150万円以上 2022~2025に交付決定あり | 年平均成長率3.5%以上 | 申請要件は+30円以上 +50円以上なら賃上げ加点 | 申請要件 +50円以上で加点 |
賃上げ計画の対象期間は、原則として交付申請時点の翌事業年度以降3年間です。
必須要件または賃上げ加点として申請する場合は、交付申請時点で賃上げ計画を従業員へ表明していることが求められます。
判定に使うのは「1人当たり給与支給総額」
2026年の通常枠では、非常勤を含む全従業員の給与支給総額を従業員数で除した「1人当たり給与支給総額」で判定します。
給料、賞与、残業手当などは算定対象ですが、役員報酬、福利厚生費、法定福利費、退職金は原則として含みません。
賃上げ要件が適用外となる場合
保険医療機関・保険薬局、介護保険サービス事業者、社会福祉事業者、学校教育法に基づく一定の学校などは、公募要領で定める賃上げ申請要件の適用外となる場合があります。
該当する事業者は、事業内容や申請主体を確認したうえで、公募要領とIT導入支援事業者への確認が必要です。
賃上げ目標を達成できなかった場合
必須の賃上げ要件や、加点を受けるために申告した賃上げ目標が未達となった場合は、補助金の返還や今後の補助金申請における減点措置につながる場合があります。
- 従業員へ表明したと申告したにもかかわらず、実際には表明していなかった場合:交付決定取消し
- 事業場内最低賃金の目標が未達の場合:未達時期に応じ、全部または一部の返還
- 1人当たり給与支給総額の目標が未達の場合:補助金全額の返還を求められる場合あり
- 加点要件が未達の場合:効果報告後18か月間、中小企業庁所管の補助金で大幅な減点となる場合あり
ただし、付加価値額や営業利益の状況、天災などのやむを得ない事情によって、返還や減点の対象外となる場合があります。
通常枠の主な加点項目
通常枠には複数の加点項目があります。ただし、加点項目を満たしたからといって採択が保証されるものではありません。
ITツールの選定に関する加点
- クラウド製品を選定している
- 「サイバーセキュリティお助け隊サービス」を選定している
- インボイス制度対応製品を選定している
事前の取組みに関する加点
- デジタル化セカンドオピニオンの面談を完了している
- IT戦略ナビwithを実施し、IT戦略マップを申請時に添付する
- IT経営サポートセンターを所定の期限までに利用している(第6回公募回から)
- 成長加速マッチングサービスで「挑戦課題」を登録し、掲載中となっている
- 省力化ナビで「解決策」のPDFをダウンロードしている
省力化ナビは、自社の業種や業務上の課題を選択しながら、省力化・業務効率化につながる解決策を確認できるツールです。デジタル化・AI導入補助金2026では、省力化ナビを所定の方法で利用することで、加点項目の一つとして扱われます。POINT 加点を利用する場合は、診断を見るだ...
成長加速化マッチングサービスは、企業が自社の経営課題を登録し、金融機関や専門家などの支援者とのマッチングにつなげる公的なサービスです。デジタル化・AI導入補助金2026で成長加速化マッチングに関する加点を受ける場合は、単にアカウントを作成するだけではなく、自社の課題を整理し、必要な情...
IT戦略ナビwithは、自社の経営課題や業務上の問題を整理し、今後必要となるIT活用の方向性を「IT戦略マップ」として可視化できるツールです。デジタル化・AI導入補助金2026では、所定の方法でIT戦略ナビwithを利用し、作成したIT戦略マップを申請時に提出することで、加点項目の一...
認定・賃金に関する加点
- 健康経営優良法人2026の認定を受けている
- えるぼし、プラチナえるぼし、くるみん、トライくるみん、プラチナくるみんのいずれかの認定を受けている
- 申請区分に応じた賃上げ計画を策定し、従業員へ表明している
- 一定割合の従業員を、指定された最低賃金の範囲で雇用している
- 直近月の事業場内最低賃金を、2025年7月時点の事業場内最低賃金から63円以上引き上げている
POINT
加点項目は、取り組みを行っただけで自動的に認められるとは限りません。
GビズID、PDFの出力・添付、課題の公開ステータス、実施期限など、項目ごとに必要な条件があります。申請締切から逆算して準備してください。
通常枠では何が審査されるのか
交付申請の内容は事務局で審査され、学識有識者を含む専門家で構成された外部審査委員会の意見を踏まえて採否が決定されます。
1.事業面の審査
- 自社の経営課題を正しく理解しているか
- 経営改善に向けた具体的な問題意識があるか
- 改善したい業務プロセスとITツールの機能が合っているか
- 業務の高度化・効率化やデータ連携による継続的な生産性向上が見込めるか
- セキュリティ対策を進めているか
2.計画目標値の審査
- 労働生産性の向上率が妥当か
- 現在の数値と将来計画に整合性があるか
3.政策面の審査
- 生産性向上や働き方改革を見据え、国が推進する関連事業へ取り組んでいるか
- 国が推進するセキュリティサービスを選定しているか
- 賃金引上げに取り組んでいるか
POINT
高機能なITツールを選べば採択される制度ではありません。
自社の課題、改善する業務、導入する機能、導入後の効果、労働生産性の計画が一つの流れとしてつながっていることが重要です。
減点・不採択につながる主なケース
通常枠では、加点項目だけでなく、過去の交付決定歴や導入内容による減点・不採択の条件も確認する必要があります。
- IT導入補助金2022~2025の間に交付決定を受けている
- デジタル化・AI導入補助金2026のインボイス枠で申請中、または交付決定を受けている
- 過去に導入したツールと、会計・受発注・決済の同一機能を持つツールを導入する
- IT導入補助金2024または2025で交付決定を受けたソフトウェアと、今回のソフトウェアのプロセスが重複する
- 過去に賃上げ加点を受けて採択されたものの、正当な理由なく目標を達成できなかった
注意
IT導入補助金2024または2025で導入したソフトウェアと、今回導入するソフトウェアのプロセスが一部重複する場合は減点、完全に一致する場合は不採択となります。
また、IT導入補助金2025の通常枠または複数社連携IT導入枠で交付決定を受けた事業者は、交付決定日から12か月以内、2026年通常枠へ申請できない場合があります。
過去の交付決定日と、過去に導入したITツールの業務プロセスを申請前に確認してください。
申請から補助事業完了までの流れ
- 経営課題と改善する業務を整理する
- IT導入支援事業者とITツールを選ぶ
- GビズID・SECURITY ACTION・加点項目を準備する
- 事業計画を作成する
- 申請者本人が確認・提出する
- 交付決定後に契約・発注する
- 納品・支払い・実績報告を行う
1.経営課題と改善する業務を整理する
「何を購入したいか」から考えるのではなく、現在どの業務にどのような問題があり、ITツールによってどう改善するのかを整理します。
2.IT導入支援事業者とITツールを選ぶ
事務局に登録されたIT導入支援事業者とITツールから選定します。申請要件だけでなく、導入後の運用や効果報告、賃上げ要件なども確認します。
3.GビズID・SECURITY ACTION・加点項目を準備する
GビズIDプライムとSECURITY ACTIONを準備し、利用する加点項目についても期限までに必要な手続きを完了します。
4.事業計画を作成する
自社の課題、ITツールの機能、導入効果、労働生産性の数値目標を整理し、必要な場合は賃上げ計画も含めて整合させます。
5.申請者本人が確認・提出する
IT導入支援事業者が入力したITツール情報や事業計画を確認し、申請者本人が申請マイページで宣誓・認証・提出します。
6.交付決定後に契約・発注する
契約・発注は、必ず交付決定の通知を受けた後に行ってください。交付決定前に契約・発注した経費は、補助対象になりません。
7.納品・支払い・実績報告を行う
契約・発注後に納品・導入を行い、請求を受けて代金を支払います。支払いは原則として銀行振込またはクレジットカード1回払いです。
事業完了後は、請求書や支払証憑などをそろえて実績報告を行います。
キャッシュバックや「実質無料」の提案に注意
補助金を受け取った後に、IT導入支援事業者や第三者から代金の一部または全部を戻してもらう行為は、名称や支払経路を変えても不正と判断される可能性があります。
注意
「キャッシュバック」「実質無料」「紹介料やコンサル料として返金する」といった提案には応じないでください。
不正と判断される行為の例
- ITツール代金の一部または全部を後から返金する
- 紹介料やコンサルティング料など、別の名目で補助事業者へ金銭を戻す
- 第三者を介して資金を還流させる
- ポイントやクーポン等でITツールを実質的に値引き・無償化する
- 補助対象者以外がGビズIDを使用し、申請手続きを代理で行う
「補助金とは別の契約」「別法人からの支払い」と説明されても、取引の実態、金額、時期、関係者、契約内容などから資金還流と判断される場合があります。
不正が確認された場合の主なリスク
- 交付決定の取消し
- 補助金の返還
- 返還額に対する年10.95%の加算金
- 延滞金の発生
- IT導入支援事業者の登録取消し
- 関係する他の申請への調査・処分
- 事業者名が公表される可能性
「営業担当者に問題ないと言われた」ことだけでは、申請者側の確認が不要になるわけではありません。
契約書、見積書、請求書、支払証憑、ITツールの利用実態を説明できる状態にしておくことが重要です。
通常枠の申請前チェックリスト
- 導入するITツールが2026年度の登録ツールである
- 申請額に必要な業務プロセス数を満たしている
- 過去の交付決定歴と導入プロセスを確認した
- 賃上げが必須要件か加点項目か確認した
- 必要な場合は賃上げ計画を従業員へ表明し、記録を保管した
- 加点項目の実施期限と必要資料を確認した
- 経営課題と導入するITツールの機能がつながっている
- 交付決定前に契約・発注・支払いをしていない
- キャッシュバックや資金還流を伴う契約がない
- 申請者本人がGビズIDと申請マイページを管理している
まとめ
デジタル化・AI導入補助金2026の通常枠では、ITツールの価格や機能だけではなく、自社の経営課題と導入するITツール、その導入効果が一貫しているかが重要です。
特に、賃上げ要件は補助額や過去の交付決定歴によって扱いが変わります。また、加点項目だけでなく、過去の導入プロセスの重複などによる減点・不採択条件も確認する必要があります。
POINT
通常枠を申請する際は、「申請できるか」「加点を取れるか」だけでなく、採択後に守る必要のある要件や返還条件まで確認したうえで申請することが重要です。
※本記事は、2026年8月28日改訂の「デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領(通常枠)」等をもとに、2026年8月30日時点の情報として作成しています。公募要領、申請期限、加点項目等は変更される場合があります。申請時は必ず公式サイトの最新資料をご確認ください。
デジタル化・AI導入補助金2026のご相談
通常枠の申請要件、賃上げ条件、ITツールの選定、事業計画などについて確認したい場合は、下記フォームからご相談ください。












